代替の無いWebサービスのUIを変える、という事

色々物議を醸している、下の一件についてつらつらと。

Twitter / jkondo: 老害を叩いてイノベーションを支持していくのがはてな民の矜恃かと思ってた(引用) / “はてなブックマークのリニューアルデザインにはみんな慣れただろ” http://htn.to/pR8MVn
http://b.hatena.ne.jp/entry/twitter.com/jkondo/status/342839522603700224


以前私は、ニコニコ動画のUI変更でも色々文句を付けていたりします。
UX/UIについて勉強したわけでもない、プログラミングが出来る訳でもないおっさんユーザーではありますが、またちょっとだけ書かせてください。

  • 代替の無いWebサービスにおいて、UIの大幅変更による影響測定は困難なんじゃなかろうか。

はてなブックマーク、またニコニコ動画、2つのサービス共に、実質的代替サービスは存在しません。
ほぼ同じような機能を持つサイトはあるにせよ、この2つに関しては、「ユーザー数が新たなユーザーを産む」循環に入っている訳で。
他の人気(ひとけ)のないサービスに移る、という選択肢は取れないのです。


そして、特にこのようなサービスにおいては、1ユーザーのページ遷移や滞在時間の変化は集計出来るとしても、人がどれだけそのサービスに満足しているか?という疑問については、基本的に算出できません。


例えば。
ユーザー滞在時間が長くなったのは、利用に満足しているからではなく、操作や情報理解に時間がかかるようになってしまったからでは?
PVが上がったのは、利用者が増えたからではなく、単にページ遷移やページ構成の変化によるものでは?


他のサービスに移る事がないWebサービスにおいては、「UIの変更によってサービス全般の利用量がどれだけ変化したか」という指標があてにならないのです。
もちろん、導線分析やクリック計測など、更に細かい分析を業務としている人達がいるわけで、恐らくは上手い分析があることでしょう。
しかし、細かく分析をすればするほど、「欲しい分析結果をどのようにも導く事が出来る」罠もあります。


結果として、代替のないWebサービスにおける、UIの大幅変更を行った影響を測るには、そのUI変更の目的(PV数?新規ユーザー増?)を達成したか否か、という部分に絞って分析するほかありません。
悪く言えば、サービス利用者が減らないなら、いくら一部に文句言われたって構わんのじゃね?という面も、あるんじゃないかなーとか。

小煩く声のデカイ、金にならないユーザーがごっそり居る…という共通項は置いといて。


この2つのサービスにおいては、「情報作成/提供/精度上昇」を行うヘビーユーザーの存在が必要不可欠、という共通項があります。
はてなブックマークにおいては、単にブックマークするだけではなく、特定URLに対してコメントを付与したりすることで、そのURLに関する人気や感想、整合性判断といった2次価値を提供する側のユーザー。
ニコニコ動画においては、その動画を消化するだけではなく、コメントを打ったり、タグを付けたり、マイリストを追加したり、他サービスで紹介したりといった2次価値を提供する側のユーザー。


そして、この2つが、共に同じようなUI変更を実施したというのも、面白い話です。
はてなブックマークは、情報の一覧性を犠牲にし、ブックマーク対象URL1つ1つの情報量を増やしました。
ニコニコ動画は、画面内操作箇所を減らし、動画閲覧者に余計な情報を与えないような変更を行いました。
どちらも、「情報を消化するだけの大多数ユーザー」への配慮が大きいのです。


私が過去に、ニコニコ動画へのUI変更に対する文句エントリを書いた際には、タブレット等への特化ではないか?という形で書いています。
もう1つ先に進んで考えるべきで、「情報入力や大量の情報収集を目的としていない、ライトユーザーor情報消化型ユーザー」とすべきだったのでしょう。

  • UIは1つに落ち着くことが出来るのか?

この後は、はてなブックマークに限って考察してみます。


今回のはてなブックマークUIの変更に対する文句は、
「1エントリあたりの情報量増」=「1画面あたりのエントリ数の減少」及び「視線移動の難易度増」
「配色変更」(特に、大量に文字情報を消化するには不向きな白地に色文字であること、そのコントラストの薄さ等)
等に集中しています。
これらの文句を私なりに深く掘ってみたのですが、
はてなブックマークにエントリされるようなページは、何か面白いものがあるかもしれないから、とにかくタイトルと1行約を時間辺り最大で確認したい」
という、はてなユーザーの中でも、特にヘビーな人からの注文なのではないでしょうか。


結果として、簡易的なヘッドラインページが実装された際に、そのページの存在に関しては、文句は殆ど付いていません。
(過去にさかのぼりたい時に、ヘッドライン表記から戻ってしまう部分については、リクエストがあります。というか早くそうなってほしい…)


ここまで考えてから、「このようなユーザーに対して、どのような対応を行うのか?」という命題を考えた時。
"老害を叩いてイノベーションを支持していくのがはてな民の矜恃かと思ってた"
なんて浅い部分を引用するのが、回答だとは思えません。


UIの変更は、手段であるはずです。
ましてや、「イノベーション」などといったあいまいなモノの為に行うものではありません。
目的は「こじゃれた印象を与えるページにして、はてな村に新規村民を呼んで町にしたいんだよ!」でも構わないですし、「ページあたりの情報傾向を、URL数ではなくURL辺りの情報量を増やす方向にしたかった」でもいい。
その目的は、果たせたのか否か?どうも、この引用をする時点では、あやしいと感じてしまいます。
いや、単に上手くいってるのにグチグチ文句いわれるのに、相当腹立ってるだけかもしれませんが。


UI変更を実行する際に、"なぜそのWebサービスがわざわざ文句を付けに来るようなユーザーで盛り上がっているのか"を考えて、それらのユーザーは、切り捨て可能なものなのかどうか。
そういった計算まで実施していたのであれば、十分なヘッドラインページと、現UIの2本立てUIを、もう少し早くリリース出来たのではないでしょうか。


もう一度。
ヘビーなユーザーによる盛り上がりで成り立っているWebサービスにおいては、情報消化側と盛り上げ側で、それぞれが使いやすい別系統のUIが必要なのです。
どこかのサービスのように「ユーザーの同一体験性が重要」などという、ピンとこない拘りは不要です。


どうか、印象論やクレーマーへの処置的な対応ではなく、実利を。
それこそが、オンリーワンであるWebサービスが、その位置を確保しつづけることができる方法なのではないかな、と私は思います。