ヱヴァ破と化物語〜そして俺はこのセカイに戻った


Info:ネタばれありません。

きっかけ

うん、まぁね、3x歳のおっさんが戻るセカイでは無いというのは承知の上で。


俺は良くも悪くも、「オタク」そのものではなく、「オタク観察者」なのかな、と思う。
面白い物、すげー!と思うものの表面を撫でまわして、満足してしまう。
それでも、撫でまわしてみたコンテンツの種類だけは多いと自負していて、様々なオタクコンテンツ(漫画、アニメ、ゲーム、小説)からコンピューター、ギャンブルまで、それなりに判るつもり。


そんな中でも、オタクコンテンツとしては王道であるはずの、アニメ。
しかし、アニメという形式が持つ「消化スピードの強要」が、個人的には馴染めなかった。
決まった時間の消化を強制するタイプのコンテンツが、苦手だったのかなぁ。ニコ動作品のように、思い切り時間を短くされると、また話は変わるのだけども。
結果的に、オタク道のきっかけであった、子供の頃にハマった作品などを除いて、アニメ作品は王道(ヤマト/ガンダム(Gまで)/エヴァ)+ジブリ庵野/押井作品群 位までを見る事と、ニュースサイトでの概要把握位しかしていなかった。


が。ここにきて、2つの作品を見る事になる。
1つは、すでに見る事が確定していた「ヱヴァ破」。
もう1つは、小説でファンになった西尾維新氏の「化物語」。
一昨年劇場で観覧済の「ヱヴァ序」をTVで見てからすぐレイトショーに行き、その間に録画していた「化物語」を帰宅して見るという流れ。

ヱヴァ破/感想

TV版、旧劇場版含めて作り上げられたセカイを使って、今回は「エンターテイメント」に走っていました。
あの小煩いメッセージを入れたがる庵野カントクは、一体どこに行ったんだという位に。
前のセカイを知ってる人向け、おっさんオタク向け、「庵野カントクファン」向け、すべてに満遍なくネタを散らかしまくり。
おっさんかつオタク、というのには、なんとなく引け目を感じる事もありますが、ネタの理解度という点で
「おっさんになってオタクであることも、悪くないな!」
と思えた作品です。
それでいて、作品としての見やすさも押さえられていて、初見の人であっても凄いと思わせるだけのクオリティと、ストーリーのまとまりが出てきています。(序はもちろん見る必要があるけど)


会場は公開2週目の金曜夜レイトショー(25:05〜)にも関わらず、ほぼ満席。グッズがほぼすべて売り切れていたのも、むべなるかな。
面白かったのは、カップル率や女子率の高さ。
旧劇場版のラストの会場実写シーンを見た人であれば覚えているであろう、「エヴァ」というコンテンツを消化する人達が、まさかこういう状況になるとは思っていなかったです。


現実を見ろ!というメッセージ性が、「エヴァ」にはありました。
その現実というのは、人と人とのリアルでの繋がりの事を指していて、その中には異性との繋がりももちろん入っていたはず。
しかし、庵野カントクの最大の誤算は、「オタクであっても、カップルも出来れば結婚もできる」という、(今となっては)ごく普通の事だったのかも知れません。
自身が結婚したことで、現実に帰りやがれ!というメッセージが溶けてなくなってしまった…という考え方もあるでしょう。
個人的には、「エヴァで出した煩いメッセージは、一部間違ってました。サーセンw 女性舐めてました。だから今回はサービスサービスゥ!」的な開き直りで作られてるのかなー、なんて思ったりしてます。
(但し次回作では、何かもっとすごいメッセージが出てきそうな予感もありますが。。)


今回の作品は、庵野カントクが金と時間をかけて徹底的にエンターテイメントに走ると、ここまで凄い作品を創れるんですよという、良い見本でもあります。
この作品を創れるだけの「環境を整えた」人たち。カントクご自身や大月氏などの賭けは、すでに勝利が確定したように思います。

化物語/感想

シャフトが作成するアニメ世界がどういうものなのか、という事に関しては、ニュースサイトなどである程度把握はしていました。
「絵枚数を減らしつつビジュアルを完成させる」手法に関しては、凄いの一言。
ここ最近のアニメを見ている人にとっては、すんなり頭に入ってきつつ喜べるであろう、表現とネタ。
しかし一見さんには辛かろうに。ラッシュや唐突に入る文字表現は、多分人を選ぶなぁ。
独特の世界を作り上げ、原作を知らない人や「ここ最近のアニメ」を知らない人をお断りするアニメ。
「ネタは狭ければ狭いほど面白い」(c)久米田先生
とは真理だと思います。
深夜アニメがこういう方向に進むのは、当然なのかも。


俺は、といえば。
ある程度の予備知識があって、更に原作を読んでいる(ここ重要)ので、ネタの盛り方や消化スピードに不満も無く、素直に楽しめたと思います。出来れば毎週見たいかな。
ま、そんな小難しいことよりも「羽川ーッ!!俺だァーーッ!!結(ry」な訳ですが。

そして思った事をつらつら

この2つのアニメに、直接相関関係がある訳ではない。
ただこのコンテンツ、どちらも「視聴に異様なまでの集中力」が必要。
他のアニメをロクにに見ていない、俺が言える内容では無いのかもしれないが、「中身が詰まっている」=「名作」というのは、万人に当てはまる公式ではない。
短時間にネタを詰め込むスタイルが、自分のコンテンツ消化スピードにはピッタリハマるとはいえ、これは決して万人に受け入れられる手法ではなかろう、ということ。
だからこそ、この2つは「俺が久々にアニメを見て、楽しめる作品であった」ことは確かなのだけども、そこまでしか言えない。


日本では、アニメという映像フォーマットに対する、体験レベルの差が激し過ぎる、と感じている。
オタク層はこの2つの作品クラスの「ネタの圧縮度」でも付いていけるが、そうでない人達には、疲れてしまうのではないかなと。
これは実はアニメに限らず、小説や漫画でも起きている状況。化物語がアレだけ尖ってしまったのは、原作自体の影響も大きいはず。
ここの問題に、一定の解を与えているのが、宮崎監督であり、細田監督であると思う。
ジブリ作品群、時かけなどは、ネタを詰めつつも、緩急を付ける事に成功している。「サマーウォーズ」は、評判をきいて相方と一緒に見に行こうかな。ヱヴァは…無理だ。


さて、果たして庵野カントクは、将来この問題にも解を出すのか。それとももっと先鋭化するのか。
まだまだ、俺のライトオタク道は、始まったばかりなのかな。