もう一度、 niconico zeroプレイヤー「には」モノ申さない!

2012/05/01から解禁なった「Zeroプレーヤー」のお話、の続き。
色々利用し、評判を聞き、開発者さんからのアウトプットを拝見して、自分なりに再考をしてみたり。
5/4 0:00の時点で、色々と修正が入った事
・コメント入力欄の常時動画下部表示が可能に
・動画説明常時表示が可能に
も交えて、思考してみた内容を書いてみようかと思います。




■ 恐らく、最初に「動画の拡大リサイズに相当自信があった」事が、新プレイヤー開発の引き金だったんじゃなかろうか。
新プレイヤーで再生する動画窓サイズは、そのまま旧プレイヤーを拡大すればOKという大きさではありませんでした。
旧プレイヤーサイズは、これから急速に進むであろうモニタの高精彩化には耐えられないサイズであり、早急に対応する必要があったはずです。
ニコマスPとしては、画質があるんだから、安易に素材サイズ(古くなら横512、最近では横640)を弄らずにそのままにしてくれと言いたくなりますが、そのサイズではフルHDを軽々と飛び越えてしまったモニタ・タブレットその他で見た場合には、冗談のようなサイズでの再生しかできないわけです。
新プレイヤーのサイズ(横864)はそれなりに十分なサイズですし、ニコ動が溜め込んだこれまでの動画資産の再生でも、画質破綻が少なく見えました。




■ 新プレイヤーサイズでは、UIを変えなければならなかった(かも)
新プレイヤーサイズを画面に乗せてみると判るのですが、動画サイズの画面占有率が半端なく大きくなります。
一般的なPCその他、ニコ動を利用するシーンを考えてみれば、
横 1024〜1920
縦 600〜1200
程度の画面がメインであるはずです。
この中に、864x486の動画がデデーンと鎮座するわけで、サブノートPCなどの画面では、どのようにすればいいのか?
それこそ、他の情報なりUIなりを、どうすれば載せられるのか?
それなりに悩んだはずです。




■ UIの指針はなんだったんだろう?
もちろんこれも推測ですが、
1)とにかく雑多なリンク、ボタン、情報を整理
2)動画再生位置の固定(特に縦位置)→動画説明の折りたたみ、タグ表示の最小化等
3)Metro/iPadなどによるタッチ操作に破綻が無いこと
は、必須だった(と、製作者は思い込んでしまった)のではないでしょうか。
「動画がメイン」で「共通体験」を標榜していたという事であれば、様々な機器であっても、「ニコ動です!」という共通画面を作る必要はあったはずです。


しかし、これによって、
1)は、動画に対するアクション(コメント・マイリス・タグ弄り等)を行う為の手間を増やしました。
2)は、動画説明やタグ情報を楽しむ層にブーイングを引き起こしました。
3)は、マウス利用前提設計であれば可能であった、ボタン・リンクの詰め込みを排除しなければならなくなりました。




■ 何をすべきだったの?それとこの先どうすべきなの?
以前の騒動でもそうですが、ニコ動はユーザーの意見を”聞いているフリをする”のがヘタクソな訳です^-^;
Appleプロダクトでも、その他の成功したオンラインサービスでもそうですが、


基本的にユーザーの意見なんざ、そのまま実装する必要は無いんです。
それに縛られてしまえば、進歩はしても、進化はしません。


しかし、ユーザーの意見を聞いているフリをするのは、とても重要なんです。


新しいモノを出そうとするのであれば、用意周到に準備と仕掛けを行い、テスト版を見せ、その背景とポリシーを説明する。
今回の新プレイヤーにしたって、
「テストしますので、まず気になる人は見てやって下さい。」
「動画が大きくなります。頑張ったから綺麗なはずです。」
「色々UIは整理しなきゃ動画をズバッと見せることが出来ないんでこうなりました。面倒に思った所を聞かせてください。」
とやっていれば、ここまで怨嗟の声が大きくなるわけもなかったはずです。
どういう評価が生まれるか判らんものを、金払ってるユーザーにどばっと展開するなんてありえないでしょう。


ヘビーユーザーとライトユーザーを両立させるのは、とても大変な訳です。
ヘビーユーザーであればあるほど、「操作の短縮化」と「覚えた機能の変動を許さない」方向に行きます。
MS-Officeその他のリボンUI同様、あまりにも増えてしまって不恰好となった機能ボタンを整理し、ライトユーザーに、多くの機能を順番に判りやすく覚えてもらうようにする事は、ヘビーユーザーにとっては我慢ならん手間を発生させてしまいます。
(まぁ、以前から、ニコ動の各種機能は、ヘビーに使おうと思うと「ふざけてんのか」と言いたくなるほど、その機能のUIが甘い事が多々あったりもするわけですが…w)
新旧プレイヤーを切り替えて使えば判るとおり、旧プレイヤーには一目で入ってくる情報が多くなりすぎた面は、確かにあるでしょう。
新プレイヤーでは、画面サイズの制約もあり、ファーストルック画面(スクロール等の操作無く目に入る画面)上で、旧プレイヤー同様の情報を乗せ、1クリック操作可能箇所を大量に盛る事は、したくなかったのかもしれません。




MetroUIの件も含め、これから先、Webコンテンツサービスには、とにかくUIに関して様々な問題が浮き上がってきます。
ここに挙げた通り、
タッチ優先orポインタ操作優先/Windowシステムor1アプリフルサイズ
あまりにもバラけてしまった想定利用者の画面サイズ
の2点だけでも、シロウトな私でも、担当者なら逃げ出したくなるんじゃないかと思うほど、検討しなきゃいけないことが有りますし。
但し、前エントリにも書いた通り、「操作方法/デバイスが1つに決まる未来」はありえないのです。
Look&Feelの重要性も必要ではあるのですが、それぞれに適した画面の追及は継続すべきでは無いでしょうか。




そしてその中で、改善して欲しいという意見に対しては、
「実装するor実装しないならそれなりの根拠を言葉or態度で見せる」
という姿勢が必要なのではないかな、と思います。




ニコ動に足りないのは、ここじゃないですかねw

niconico zeroプレイヤーにモノ申さない!

2012/05/01から解禁なった「Zeroプレーヤー」のお話。
私のTwitterラインは製作者さんが多いので、怨嗟の声がコレを書いている間にも渦巻いている訳ですがw


【新プレイヤーの印象】

■一番気にしてたのは、元動画サイズからのスケールアップによって、動画が汚く見えるんじゃないかという心配は無かった。
これは、単純なスケールアップではないのか、解像度のマジックなのか、思ったよりもずっと元画質を維持できてました。
前プレーヤーで再生窓を大きくした時の画質破綻を感じる事無く、古い動画もそれなりに見えるようにしたことは、個人的に拍手を贈りたいと思います。
…とはいえ、今度は製作者として、新サイズに対応できるかどうか、製作環境の調整とテストをしなきゃいけないわけですが^-^;

検証用:
640x360でUpした自作動画
亜美真美誕生祭2011】XANADU桃源郷的な何か。

864×486にスケールアップされて再生っぽい。


512x288でUpした自作動画
いおりんもシャンソンで気取ってみたようです【オー・シャンゼリゼ

648x364にスケールアップされて再生っぽい。
→ (追記)512x384で上下黒帯でした。。(汗)そういや512x288で作ってた作品って、上げてなかったなぁ。


512x384でUpした自作動画
【昭和メドレー3】ヤッターマンED/天才ドロンボー

648x486にスケールアップされて再生っぽい。


■PCから俺は見てんだよ!新UI使いづれぇよ!
ぶっちゃけ、このUIは「タッチパネル操作」を目指しすぎていて、マウスで指定したり、キーボードアクションしたりといった、PC向けのUIじゃありません。
タッチパネル操作に必要なのは、とにかく「アクション可能箇所のサイズをどれだけ大きくするか」という事。
そういう意味では、PC上からではふざけてんのかと思うようなコメント入力操作は頷けます。パネルから旧プレイヤーでコメント打とうとは思わんですものね。
他のアクションについても、指で大雑把な操作でもちゃんと意図した通りの操作に出来るように出来ているので、さぞかし”目的の機器からは”使いやすいでしょう。


■動画情報を端っこに追いやるとか舐めてんのか?とは思うけども。
画面固定でスクロールしない事を前提にした構成。一見では見れない為に、とにかくアクションしないと動画情報が見れない仕様についても、フルサイズ固定画面を前提にしてみれば、このUIはソコソコ良くできてると思います。
しかしタイトル脇をクリックで投稿者コメ+α、ってのは、判り辛ぇ…!w
製作者モチベーションの向上の為に、再生数や投稿者コメが一見して判らずあんな位置になるのは許せん、という意見も見ますが、1画面固定前提では仕方ないかなぁ…と思います。


【新プレイヤー、使い続ける?】
一応、自分は新プレイヤーで固定にするつもりです。
PCからはアクションに必要な操作が2段3段増えてる事は判っていますが、まぁ、新しいモノ好きなのと、新サイズの検証はやはり必要だと思いましたし。


【こんなクソなUIが主流になるん?】
自分の疑問はここに集約されます。
言わずと知れたiPad、そしてWindows8が目指す、Metro UI
どちらもタブレット系UIが主流になるという将来を目指して、作りこまれたものではあるのですが…


今までのPC系UI舐めんなよと。


PC系UIは、情報入力と情報閲覧に関して、バランス良く操作の最小化を目指してきたUIだと思います。
タッチパネルは、情報入力はソコソコに、情報閲覧と指操作にやや特化したUIです。


既存のPC系UIは、PCで業務やコンテンツ製作を行う事に必要なUIであり、それが少数派になる未来は、あまり想像できません。
もっと言えば、タッチパネルUIに全てが集約されると思ってる人は、PCで作業をした事が少ない人か、新しいモノ=正義とするタイプではないでしょうか。
3Dコンテンツに飛びついて「これから映画は全部3Dだよ!」とか、既存のSNSの歴史を知らず「FaceBookが全部を制する!」とか言い出す、困ったタイプではないかと思います(毒)


この辺の関係に関して、丁度よい記事があったので、ここにリンクを。
アップルは“MacBookとiPadの統合”など目指さない――クックCEO/computerworld.jp
個人的にAppleはキライなのですがw クックCEOは「判ってる」と言わざるを得ない…^-^;


タッチパネルUIが必要なシーンと、既存のPC系UIが必要なシーン、両方とも生き延びる訳です。
であれば正解は1つ。
PC用のUIと、タッチパネルUI、どちらも利用シーンが判っているのですから、それぞれに受け入れられるべきUIがあり、共通化なんぞありえないのです。
両方のUIを覚える手間を、利用者は払わないと思っているなら、UIそのもの共通化ではなく、UIの直感的なわかりやすさをそれぞれで優先するべきでしょう。


という訳で、ニコ動においては、動画サイズはそのままに、「PC向けUI」と「Metro/iOS向けUI」の両立と、直感的判りやすさの追及をお願いしたいなぁ、と思いました。

構築運用屋から見たHDD+αな話。

こちらのTogetterエントリ

サーバのディスクの話
http://togetter.com/li/238411


に、大量にはてブがついているのをみて、今までの私の話などを。


このエントリが、何故に多くの人の関心を寄せるか…というと、「RAIDの一般化」という部分が大きいと思います。
今じゃSATA(&SAS)RAIDが、Intelチップに機能として搭載され、数万円台の外部NASRAIDカードで、RAID5,6どころか1+0や50まで構築できる時代。
「Diskが壊れても、データは壊れない!」という売り文句は、非常に魅力的だったりします。

今ではSATAのRAID1(HDD2本でミラーするだけ)なら、数千円のレベルでカードが買えますね。
では、Intelチップセットや激安RAIDカードで、保護的RAIDを組んだ状況で、どれだけデータ保護が出来るかというと、
HDDの故障を救える確率と、ミラーが壊れてデータの不整合が発生する確率が、ほぼ同じ位になってしまう…というレベルでしょうか。
特に、安いRAIDの場合、ライトバックキャッシュの有効化は鬼門です。出来ればこれは無効にしないと、HDD物理障害を含む様々な要因でOSが不安定になった時に、データ不整合が簡単に発生してしまいます。


では、HDDの信頼性そのものはどうなのか?と言われると、確かに件のエントリに書かれている通りで、初期不良率が3%〜5%程度混じるレベルのブランドがあるのは確かだったり。
私の経験(15年前〜現在までの、単体〜中規模RAIDアレイがメインです)からみても、SCSIATA(現在ではSASSATA)の信頼度の違いは確実にありますし、それを束ねるRAIDにおいて、論理・物理障害によるデータ破壊の確率は、その束ねたHDDの数だけカーブを描いて上がります。

10年位前のサーバで、OSレベルのソフトウェアミラーRAIDを組んだ機器の保守運用もやっていたりしますが、壊れるのは殆どがATA系のHDDばかりで、SCSI系のHDDはほんとに壊れにくいです。
もちろん、「Diskがどれだけ実際にデータアクセスするか」によっても、故障率は左右される訳ですが…


HDDの信頼度を維持する為に、構築運用屋が検討し実施することといえば、
エージング(継続したランダムHDDアクセスをしばらく仕掛けて、初期不良品を弾いたり、長期利用可能であることを確認する)
■設置場所の温度維持(HDDは本当に湿気と温度変化によって、故障率が変ります)
■サーバorストレージ筐体の選定(HDDマウント部分及びエアフロー)
■ケーブリング(SATAのケーブルは、安物だと緩くてアウトなケースが。。)
■Microcodeの更新(HDDにもいわゆる「ファームウェア」がありますし、メーカーから訂正版が出ることが多々あります)
■ドライバの更新(FCカードやSCSI/RAIDカードのドライバの更新などは、ほんとに頻度が高いです。)
RAIDの組み方の検討(実用レベルならRAID1,5,6,10,50とホットスペアを検討して、パフォーマンスとデータ保持を天秤にかける必要があります)
■最終バックアップの取得と方法(ミラー&スプリット、テープ保管、差分保管等)
といった所でしょうか。
これだけみても判るとおり、ここの部分においては、構築運用経験が欠かせませんし、出来れば物理層のレベルでの知識も欲しい所ではあったりします。

サーバの保守運用といってもピンキリで、100万円以下のサーバをラックに積んで、小規模な社内向けサービスを組む程度から、億単位のストレージを運用する事まであるわけです。
考えなくてはいけない事は、「掛ける費用や人員と、データロスト時の被害レベル」を算出して、データ保護に掛ける費用と手間と責任範囲を明確にする事。
当然のようで、ここをなあなあにして運用を始めて、いざ事故が起きた時に責任の擦り付け合いになるケースが本当に多いです。


全般的に言えることとしては、「お金が掛かるのは、それだけの理由がある」という事。
どのようなメーカー製のサーバであれ、安いサーバHWと、高いサーバHWは、ちゃんとそれなりの理由があったりします。
HDDだけが、この例外から逃れられるわけもありません。

ぶっちゃけ、どんなメーカーの製品であれ、100万以下で買えるPCサーバには、メーカーは大して長期運用を目指した設計なぞしていません。
 安ケミコンぶち込んで、コンデンサのお腹がパンパンだぜぇ…
 廃熱計算もせずにGPUチップのせたら、DC環境下でも異常高温で50日に1回程度勝手にOS停止
 CPU横付けにしたら、ヒートシンクの重みでソケット足がゆがんだ
 稼動チェックしない大容量メモリを積んで、10%弱の不良品を出荷
 RAIDカードとバッテリを一体化したら、バッテリが膨れてRAID基盤が歪んだ
 2重化電源なのに、故障した電源ユニットを抜いたら筐体停止
 1年電源ON稼動で、ファン故障率5割越え
など、など。もちろんそれぞれメーカーは異なります。HP,旧COMPAQ,IBM,DELL,SUN,富士通,NEC,日立。どこのものでも「ありえます」。
ストレージメーカーから人員を出すレベルのシステムであれば、ストレージ設計自体を引き渡す事も可能ですし、対障害レベルについて、ヒアリングの段階から任せる事が出来たりもしますが、某メーカーだと、出してくる人員のスキルが…ゴニョゴニョ…とか。(汗)


そして何より、RAID故障よりも頻発する障害は、「運用でデータが壊れるor消える」こと。
人的ミスやOS・アプリケーションのバグによるデータロストは、HWの故障などよりもずっと多くありますし、それに耐える運用(バックアップ頻度とリストア手順・時間の検討)をしなければなりません。

先ほどのエントリでは、「メールサーバとSATAを組み合わせるな」というような話がありますね。
メールサーバというより、「特定のディレクトリに、大量のファイル作成・削除が発生する運用が前提のアプリケーション」というべきかもしれません。
LinuxWindowsなどの、既存のFileSystemにおいては、1つのディレクトリ直下に、数千を越えるファイルを置くような運用をすると、ファイル読み出しだけで目に見えてレスポンスが悪くなりますし、ディレクトリファイルそのものが壊れて、データの論理異常が発生する確率があがります。
メールキューファイルやメールボディファイルを、1つのディレクトリ直下に置くような運用をせず、アプリ側でディレクトリを分散させる方法を考えるべきですね。


こんな事を考えていくと、「データ保護には何が必要なのか」という命題に対して、RAIDレベルやHDDの信頼性というような部分よりも前に、まず考える事があるのに気付くかと思います。
以下に挙げてみますが、会社のデータが入る機器であれば、メーカー問わず利用形態問わず、最低限検討すべき内容かと思います。


1)HDD及びストレージの中に入るデータが、どれだけ貴重で、ロストしたときにどのような手を打てるか。
定期的に、データの更新を止めて、そのバックアップを取れるシステムであれば、それこそ安いサーバでソコソコのRAIDを組んでおけば良いという判断はありですし、それがコストパフォーマンス上も正しい判断です。
但し、必ず復旧すべきデータなのであれば、その手順と対応コストも加味しなければなりません。
2)アクセスパフォーマンスの確保
DBサーバ、流通量の多いメールサーバ、コンテンツサーバなど、1日にテラ単位でデータが更新される事がありえるサーバであれば、RAID1+0以上の検討やキャッシュ設定、メンテナンスしやすいように特定部分だけを外出ししたり、その部分のHDDの寿命を短めに見積もったり、など。
最近ではSSDの検討なども必要になるでしょうか。
3)サーバの利用を止めて定期メンテナンス出来る日程と、緊急メンテナンスが必要となった場合の承認フローの作成
PCサーバレベルであれば、最低でも月1で6h程度のメンテナンス時間は確保したい所です。(OSのアップデート、microcode適用等)
更に、稼動状態でバックアップが取れないようなシステムであれば、頻度とバックアップ時間も確保する必要があります。
※ここが一番難しいというか、なあなあにしてしまって、一回痛い目を見てから再検討となる事が多いですね。。
4)どれだけ費用と運用時間を掛けられるのか
「絶対データは保護しろ、24h365d稼動させろ、金は出来るだけ掛けるな」というのが案件になる事、多いですよね。もしくはこれが暗黙の了解になっているケース。
9割は上手く行くのかもしれませんが、残り1割が発生したときの事を考えるのが、構築運用屋に必要なスキルです。
中のデータ、システムが生み出す利益との兼ね合いですが、まずは中のデータの重要性とサービス要求レベルをほぐしてみる事から始める必要があります。


どのようなストレージ製品を使い、HDDのRAIDレベルをどうするかという検討は、少なくともこれらを決めた"後"の話。
これらをきちんと細かく検討していれば、それほど悩む事ではない…と、私は思いますし、データセンター構築レベルの仕事でない限りは、十分だと思います。

シャトー・ドゥ・ピゼイ 2011 ゲット!

Mu_KuP2011-11-17



例年ここにエントリをUPしてる、ボジョレー解禁日の「シャトー・ドゥ・ピゼイ」の話。
去年から、これを店頭で販売している事を知っている唯一の、JR中央線某駅前の酒屋さんに行ける機会が殆どなくなり、今年は殆ど入手を諦めてたのです…が!


なんと、解禁日に示し合わせたかのように、この駅に社用がw
こりゃもう、仕事速めに終わらせて、ゲットしてくるしかない!…というわけで、今年は無事ゲット出来ました^-^
夕方、仕事帰りに寄ると、既にもう品薄状態。危ない所でした。


帰宅してから、毎年恒例のピザ屋さんに注文して、待つこと40分。
ピザの到着と共に、開栓…うぉっ、何か去年より、香りが強くない?
一口飲んでみると、元々この貴重なボージョレが持っている味わい深さが、例年よりも凄い。
いやぁ、今年は当たりなのかも知れません。(なぁんて、ワインのシロウトが言っても全く説得力がないのですがw)


下戸であり、それほど味覚も自信の無いおっさんではありますが、香りだけでも楽しめるという、素晴らしいボージョレと、今年も出会えた事に、乾杯しつつ。
ロクでもない災害、事故、事件が続く最中ではありますが、今日だけは、この実りに感謝しつつ、幸せに酔いたいと思います。
ありがとう、ピゼイ。

■「誰の責任なのか」という無責任


まずは、東日本大震災で、被災された方々へ、お見舞い申し上げます。
一刻も早い、「日常」が、帰って来る事を祈念し、お手伝い出来る機会があれば、出来るだけのことをしていきます。




さて。
Twitter、Blog、様々なメディアにて、「犯人探し」が始まりかけています。
現時点で、これを言うのは早急すぎるのに。いや、詳しく見れば、それは犯人探しですらなかったりも。


民主が悪い。
鳩山が悪い。
菅が悪い。
自民が悪い。

マスメディアが悪い。
アナウンサーが悪い。
新聞が悪い。

電力会社が悪い。
仕分けが悪い。
買占めする奴らが悪い。


果たして、そうなのでしょうか?
もっともらしい原因や、ソースがあれば、それが責められるのでしょうか?


あらゆる失敗は、その表層に見える2割の直接的原因と、その2割を支える8割の失敗を生み出す土壌によって生まれます。
単純に、料理中に包丁で指を切ってしまった…という失敗であっても、直接的に見れば「包丁を扱う時に不注意だった」という事で済んでしまいますが、ではその不注意を生み出したのは何か?という部分まで検討されることはなかなかありません。


ネットに溢れる、今回の災害がもたらしたあらゆる「対応のまずさ」と「その理由らしきもの」。


「だから原発とか作るのが間違い」
「もっと早く決断して水入れて対応していれば」
「停電計画が全くスムーズじゃない」
交通機関の動かし方がおかしい」
「マスコミが品不足を煽るから」
「仕分けで準備費削ったから」


これらの、一見「もっとしっかりやりやがれ!」「おまえのせいか!」と文句を言いたくなる失敗らしきもの。またその理由らしきものが、簡単に見つけられてしまうもの。
落ち着いて考えて下さい。それは、2割でしかないんです。
今回の震災への対処でこれまでに発生し、これからも発生するであろう、様々な失敗に対して、その直接の原因だけを責めないで下さい。
※実際には、その2割すら特定せず、単に「責任者でてこい」レベルのものすら散見されますが…


日本においては、ほぼすべての現場において、危機に対処し、実際に手を動かしている人たちは、本当に優秀なのです。
ネットの情報を集めれば、それらのヒーローが、本当に日替わりで何人も生まれているのを、目の当たりにしているでしょう。


だからこそ、ネットで批判をする時は、一旦考えてみて下さい。ソースは表層の失敗しか特定しないのです。
その失敗は、誰が生んだのか?その土壌は何なのか?


思ったことを、そのまま垂れ流せるのが、ネットの良い所でも悪い所でもあります。
ましてや、表層の2割であれ、失敗の原因を見つけた時、知った時の行動として、その内容を指摘したくなるのは当然の話。
それを止めろという事ではありません。ただ、そこから先に進む事を、「世の中そんな単純じゃねぇよな」という気持ちで、めんどくさがって止めちゃダメなんです。


とりわけ、日本は、表層2割の原因を見つけて、それを断罪し切り捨て、その失敗「だけは」繰り返さない事が非常に得意です。
そして、誰かが犠牲になって、失敗が再発する8割の土壌をそのままに、突き進んできてしまった。
平常時はそこそこ才能を発揮するのに、危機に弱い人間を管理職に祭り上げるのも、この部分と共通する話でしょう。
それでも今までは良かったと思います。


でも…そろそろ、止めませんか?
もう1段だけ、失敗の原因を掘り進めるという思考訓練をするだけでも、全く違う何かが見えてることがあるのですから。


もしかしたら、表層2割の原因の責任を取らされる人が、出てくるかもしれません。
しかし自分だけでも、
出来る限り。
落ち着いて。
怪しげなソースに惑わされる事なく。
その失敗の土壌を、探りたいな…と考えています。
それが部外者にできるんか?と言われると、難しいのですが。
ただ、単純に、その失敗の理由を見つけてバッシングする側には立たない事を、肝に銘じておきます。
…なんて、理想論もいい所で、実際にそれが完全に守れるかどうかは、自信がありませんが、気持ちだけでも。



■などと綺麗事を言っておきながら


”この災害で露呈した失敗を生み出した、8割の「失敗を生み出した土壌」とは何なのだろう?”という、現時点での自分勝手な推測。


一概に言えることではありませんし、それぞれに、失敗学の調査が必要でしょう。
しかし、ただ1点、共通することがあるかもしれません。それは、「マネジメント力の不足」。
もっと具体的に、キツイ表現で言い直しましょう。
「能力を発揮せずに、自分の立場や地位に固執する無能者が、責任者として蔓延っているシステム」では、こういう非常時に、失敗が露呈するのだと考えます。
そして、これに該当する人は、責任者といいつつ、責任を取る事もほぼありません。


経営努力しなくても利益だけは出る巨大企業に張り付いた役員達。
国家/地方予算からお金が降りてくる為に、事務員数名+役職者数十名などの歪な構成になっている、各種許認可団体の役職者達。
上手く要望と許認可を廻す事で、お金を集める事だけは達者な政治屋
批判することで成り上がったり、2割の直接的原因を潰しただけで耳目を集めた政治家。
(逆に、本人は張り切ってるが、その方向が180度どころか虚数軸にぶっ飛んだ政治家なんてのも居ましたがw)


今の時点では、これらを怪しい目で見てるというのが、私の勝手な推測です。
しかし、これもまた、「8割の土壌に見える、2割の表層」でしかないのかもしれません。


でも、そんな連中の元でも、自分の責務を果たした、名も無き現場の人たちの事も、決して忘れません。
被災された方、そして今被災地で汗を流されている方々に、必ず幸せが訪れる事を祈ってやみません。

Webを再起動する7人?んな馬鹿な話があるかいw

Netの世界に転がる、様々なネタを見ては楽しむ、「Newsサイト」として、最近ほぼ毎日拝見している
Gizmodo Japan
のエントリーに、妙な記事が載っていた。

WWWへのアクセス権を持つ7人
http://www.gizmodo.jp/2010/07/seven-people-have-been-entrusted-with-the-keys-to-the-internet.html


抜粋:
上の画にあるこのカード。世界で7人だけが保持している、大災害時にWold Wide Webを再起動させる力を持つカードなのです。

んなアホな、Netの世界にシングルエンドポイントSingle Point of Failure(SPOF)(1箇所のシステムがサービスを提供できなくなると、システム全体が止まる)がある訳無いし、ましてやWWW−http/httpsプロトコル限定とか有り得ない!
ブクマ、Tweetを集めて、皆でカコイイカコイイ言っていたので、ちょっと幾らなんでも、なぁ…と思い、以下のようなはてブコメを残してから昼寝してたのだが

Mu_KuP …ネタだよね?/どう考えてみても、今のInternetにシングルエンドポイントはないし…(AS/DNS/その他)/つか、WWWだけに限定?訳判らん記事。


どうにも納得が行かず、色々と調査をしてみた。


Newsの流れとしては、

「An Order of Seven Global Cyber-Guardians Now Hold Keys to the Internet」
POPSCI : http://www.popsci.com/
http://www.popsci.com/technology/article/2010-07/order-seven-cyber-guardians-around-world-now-hold-keys-internet

「Bath entrepreneur 'holds the key' to internet security 」
BBChttp://news.bbc.co.uk/
http://news.bbc.co.uk/local/bristol/hi/people_and_places/newsid_8855000/8855460.stm


の2つの記事が、

「Seven People Have Been Entrusted With The Keys To The Internet」
Gizmodo US : http://gizmodo.com/5597964/seven-people-have-been-entrusted-with-the-keys-to-the-internet


に流れて、上の和訳記事になったらしい。


この7人が何を指していて、何を守れるのか。
先にタネを明かせば、以下のようになる。


Internetで重要なサービスとして、”名前解決”を行うサービスがある。
このサービスは、www.foo.com といった「ホスト名.ドメイン」構成の文字列を、住所とみなして、アクセスすべきIPアドレス("192.168.xxx.xxx"といった、アレです。)へ変換したり、逆変換したりする役割をになう。

このサービスは、世界で13箇所(IP上は13基だけど、もちろん複数台化されている)で運営されている、DNSルートサーバを大元とした、階層構造を持っている。

つい最近まで、DNSはその応答を一方的に信用する仕掛け(回答があればそれを疑ったり検証したりする仕掛けが無い)状態だった。

しかし、キャッシュポイゾニングという攻撃が確立され、攻撃者は特定の偽の返答を生み出して、「ホスト名.ドメイン」の文字列を、別のIPアドレスに解釈させて、利用者を攻撃サイトに誘導することが出来ると判明した。
(更にタチの悪いことに、この攻撃の場合、鍵や証明書などによって、アクセスサイトの存在や、安全な暗号でアクセスしている事を証明する技術をパスしてしまう。)※参照

そこで、名前解決のサービスそのものに証明書発行技術を取り入れることになった。(これが"DNSSEC"と呼ばれる方式)
名前解決をする際に、階層の1つ上のDNSサーバと、解決対象のDNSサーバの証明書を扱う事で、名前解決を信用できるものにする仕掛け。

これを一番上の階層まで考えると、「DNSルートサーバ」であることの証明書を発行する為のシステムが必要となる。


この、DNSルートサーバであることを証明するための、証明書発行システム”(ああ、ややこしい)が、今回の記事のネタになっているようだ。
暗号化+証明書のシステムは、公開鍵(暗号を解く為に配布される情報)と、秘密鍵(暗号を作成するための情報)と、暗号化エンジンの3つが要素になっているが、
万が一秘密鍵が漏れてしまうと、偽の証明書を作り、ルートサーバを詐称することが出来る可能性がある。
その場合は、新たな証明書の鍵を作成し、配布しなおさなければならなくなる。


大元の記事によれば、新たな秘密鍵を作成するには、7人中5人のカードキーアクセスによって承認される必要があります…ということのようだ。


確かにロマンを感じない訳ではないけども、今回の記事は、ツッコミ所が多すぎるのだ。
■WWW限定ではない
 元記事に"World-Wide-Web"という文字列が入っているからなのだろうけども、DNSはほぼすべてのInternetサービスが利用している。
例えば、今後の期待だが、DNSSECがキチンと広まれば、信用の無いドメインからのSpamメールを遮断できるようにもなる。これは非常に大きい。※参照
■別にその7名は、国際的な力関係を表すものではない
 何故日本人が居ないの?日本はこれだから…的な感想は、実に的外れ。
これらのシステムは、ICANN(1998年に設立された民間の非営利法人…だけど、実質は米商務省の影響が大きい)によって選定されているのだろうし、逆にアメリカ色をよくここまで薄めたもんだと感心するくらい。
ちなみに、DNSルートサーバそのものの運用管理者は、13箇所中10箇所がアメリカ所属団体が主導。残りはEU2箇所、日本が1箇所。物理的なシステムの管理者、という意味では更に多岐に渡る。
■そもそもこのシステムが攻撃されても、Internet自体が停止する訳ではない
 証明書の鍵が漏れて、DNSの詐称が可能となったとしても、現時点でキャッシュポイゾニングを行うには、対象のドメイン脆弱性のあるDNSサーバソフトを使っていて、なおかつそのサーバへの大量アクセスによるクラッキングが必要。
 更に言えば、そもそもDNSSECの普及率自体がまだ高くない。現時点ではそもそもその汚染される可能性のある証明書システム自体が使われていないのだ。


確かに、記事としては面白いし、物語性を高める記述は楽しいと思われるけども…
多くの技術者が、よってたかって20年近くを費やして作り上げた現在のインターネット基盤を、こんなしょっぱい記述で、脆弱なモノとして扱って欲しくない…というのが、正直な感想だったりする。

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【追記】2010/08/01 10:50
まさか一気にこれだけのアクセス、ブクマ、つぶやきを頂くエントリになるとは思っておりませんでした。下記の通り、思い込みの強いおっさんによる急ぎエントリであったため、この内容でも色々と判り辛い点があること、余計な事を書いていることをお詫びします。


ずっとあちこちのコメントなどを拝見しておりましたが、今回のネタとなったシステムについて、一番判りやすい情報は、恐らくコチラだと思います。
ルートゾーンにおけるKSKの管理方法
http://jprs.jp/dnssec/doc/root_tcr.html

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※急ぎエントリを書いたからこうなる!ツッコミポイント晒し場所※
Twitterにて指摘、ギズモードを「Gizmode」と表記してたのを修正。もちろん正しくは「Gizmodo」
ブコメにて指摘、「シングルエンドポイント」 → 「Single Point of Failure(SPOF)」に修正。自己流の言葉を慎みましょう、俺。
■「(更にタチの悪いことに、この攻撃の場合、鍵や証明書などによって、アクセスサイトの存在や、安全な暗号でアクセスしている事を証明する技術をパスしてしまう。)」という記述は、詳しく言えば間違い。きちんと証明書関連の警告と、アクセスするドメインを確認する人であれば、おかしいな?と思えるエラーは出ると思われる。…が、Webアクセスでそれをしてる人を見たことがあるかというと、疑問ではある。
■コメントにて指摘、「信用の無いドメインからのSpamメールを遮断」の件に斜線
DNSSECの普及が、今現在設定導入が進む、SenderIDなどの「メール出自を明らかにする」技術の補強と推進にも繋がる…と考えて記述した一文ですが、確かにDNSSECが持つ、「ドメイン詐称を防ぐ技術」とは異なるので、斜線を引きます。
迷惑メールに悩まされる運用者としては、主に海外にある、DNSのメンテナンスをせず、またOutbound Port25 Blocking(プロバイダに繋がった一般クライアントから、直接メールを送信するのを防ぐ)の導入もしないプロバイダIPからのメールなんか、窓から投げてしまえと思ってしまったりも。まぁ、Internetの通信の自由を保障する面との兼ね合いがあるのは承知しているのですが。

一番メンドクサイ事を、楽しんでみる「楽園 le paradis」

どうも、割とエッチなマンガも好きなおっさんです。(挨拶)

  • 自分の読むマンガの事とか

読みたいマンガ/気に入ったマンガは、その作家さんを見て集中的に収集する癖があります。
(もちろん、それをやると黒歴史まで漁ってしまうことも多々あるわけですがw)
また、それが連載されている雑誌に手を出すほうで、気がついたらマイナー系の季刊誌や別冊に手を出している事も。
そしてまた、お気に入りな作家さんを見つけては…というループが繰り返されます。


気に入るマンガの傾向が、自分でも判らないという無節操ぶりだったりするのですが、一つだけ共通するのは、「その発想は無かった!」とか「この視点は無かった!」という、発見の楽しみだったりするのかもしれません。
ただしその発見は、実は自分が読んでいなかっただけで、20年も30年も前からずっとそこにあったものだったりすることも多々あります。


そして、「恋愛」的なものを描くマンガは、少女漫画というジャンルが発達したこともあり、数多くの作品が描かれてきました。
しかしマンガがマンガであるが為に、現実的な恋愛からかけ離れたファンタジーだったり、読み手が幸せを感じる為のストーリーだったりすることも多いジャンルです。
高校時代にドツボにハマった"めぞん一刻"が、「狙って」描かれた作品だと知った時の衝撃と、それまでに見に染み付いてしまった、異性への待ちスタンスは、マンガが自分へもたらした唯一の悲劇と言えましょう。(笑)


成人してから私がこのジャンルで読むマンガは、いつからか、女性の描き手さんによる、女性心理の現実を錯覚させるほどリアルを模したストーリーモノが多くなりました。
「ナイーブ」やその他短編群の二宮ひかるさん、ドス黒さ全開「聖・高校生」の小池田 マヤさん、「シマシマ」「はるか17」の山崎紗也夏さん、最近では「モテキ」の久保ミツロウさんなどなど。
そんな現実があるのか?ないのか?それとも女性の心理の中ではこういう世界があるのか?というモヤモヤ感と共に、それを納得させてしまうだけの、泥臭いストーリーやドキッとする表情を描く作品に惚れてしまうのかも知れません。

  • もし上の文章にフムフムと頷く、対象範囲狭い人がいましたら

是非、表題のこのシリーズを読んで、悶えてみて欲しいのです。

楽園 le paradis


この雑誌に掲載される作品、どれを取っても、「面倒な恋愛も良いな!」と思える珠玉の作品ばかり。
描かれる内容も、同性愛だったり、エロだったり、学生時代の恋愛だったり恋愛ではなかったり、かと思えば明治文学の薀蓄だったり。
独自の濃い色を持つ作家さんをこれだけかき集めて、自由に描かせていて、しかし読んで見ると何か恋愛的な行動をしたくなるだけのまとまったパワーを持つという、奇跡のようなオムニバスです。


どことなく少女漫画の可愛さを残す絵のタッチで、ストーリーもすこしファンタジーなネタがある作品。
そこで描かれる「ちょっとおかしな男女の気持ちと関係」は、読んだ後にちょっとホッとします。ストーリーのまとまり感は、この雑誌でデビューとは思えない(汗)
Vol1で描かれた「薔薇だって書けるよ」も傑作ですが、Vol2/3で少しづつ「毒の入れ方」を学ばれて来ているようで、実にこの先も楽しみな新人さんです。

  • かずまこを さん


女性心理の不可思議を思い知らされる作品。Vol1〜3まで続き物ですが、1つだけ抜き出してもちゃんと読めます。
特に衝撃的なのは、Vol1の最終ページ。そこに至る経緯までも、かなりのドロドロとしたドラマではあるのですが、予定調和を思いつつ読み勧める読者に、よりによってそういうオチか…!という裏切りと、それを納得させてしまうだけの表情と物語に、参ったといわざるを得ません。


こちらは私が創刊号から購入し続けている「アフタヌーン」でも掲載歴のある、ある意味独特な雑誌には欠かせないお二人。
鶴田さんのユルい空気+女の子、沙村さんの壮絶なまでのネタSF短編、どちらも良いアクセントです。
Vol3の鶴田さんの女の子は、ある意味必見です。「現実の女性」であることそのものがネタになるのは、なんというか…w
そして沙村さん。…どうやったらこんなネタが思い浮かぶんだよ!^^; 毎回思うけどさぁ!w


シリーズではなく、毎回多めの枚数で、読み応えのあるショートストーリーを描かれています。
ストーリーテーマのオリジナル性や、その構成力の高さと共に、やや少ない線で魅せる「怒る」女性の表情の描き方がたまらない方。マンガだから伝えられること、というのが一杯詰まっています。
体調を崩されてしばらく休養とのこと。(残念…)ゆっくり休養して、また是非元気に活躍されて欲しい方です。


登場する女性の心理描写が素敵な方。ちょっと変わった行動を取るVol2の女性も、実際に居そうなVol3の少女も、おっさんが読んでもその気持ちが伝わってくるというのが、素敵な作品。
Vol2で登場する女性は、オチで徹底的に恥ずかしい思いをするのですが、男性が読んでも、この女性の方に思いいれを強くしてしまう位、マンガでの気持ちの伝え方の上手い方かなと思います。


( ゚∀゚)o彡゚メガネ!( ゚∀゚)o彡゚メガネ! …ではなくて(汗)
この方の作品は、倒錯と現実の境目や、妄想と現実の境目をずっとウロウロし続けるのが多いのですが、この雑誌で描かれた短編3作も、エロく不安定な精神を描く内容だったり。
エロなパートでも、そうでないパートでも、「理由なんかない!私はこういう気分!」という手のつけられない女性の一面や、「何かを求めているはずなのに、その何かがわからない」という、♂にとってみればめんどくささの固まりのような女性性を描かれています。
ああくそ、それなのに、この人の描く女性は素敵なんです。
ワガママな目、弱々しそうな目、エッチな時の目。そして裸の時の柔らかそうな身体から見える女性性。
読めば確実にストレスを感じてしまうけども、それを乗り越えてくる女性の魅力を思い知らされます。

  • 読み飛ばさせない構成と、Web連動

ここに挙げていない作家さんであっても、その内容が特徴的ではない…というわけではありません。
(むしろ、黒咲練導 さんなど、特徴的過ぎる人も居る)
オムニバス形式の雑誌というと、どこかしら隙が生まれたり、読み飛ばしてしまう作品が出てしまったりするのですが、この雑誌を買う層を的確に捉えて、異なる種類のマンガ群をまとめて魅力ある雑誌に仕上げてきた、この編集スタイルに脱帽です。


更に、この雑誌のWebサイト
白泉社|楽園
http://www.hakusensha.co.jp/rakuen/
は、通常のWeb連動とは全く逆の、「本誌の後」をWebに載せるという手法。読んだ人だけが味わえるアフターストーリー付き。
(このアフターストーリーで、「えー?!そういうオチ?!」的な驚きを提供してくださる作家さんの多いこと…)
販売促進というよりも、買った人だけ、思いがけず至れり尽くせりなサービスというのも、新しい…のかな?


おっさんの中では、ここ数年では一番お気に入りの雑誌となった、この「楽園 le paradis」。
もし上の文章で、一つでもティンと来たものがあれば、ポチって損はありません。今なら創刊から買えるのもメリットかなと。


是非、「読むと、したくなる」というコピーを持つ雑誌の力を、体験してみては如何でしょうか。